ノンエリート青年の社会空間
という本を読んでいる途中。要するに大学出てそのまま就職という「いわゆる」一般的なコースをたどらなかった人についてのフィールドワーク。
今読んでるところは自転車のメッセンジャーの仕事をしてる人達のところ。
普通に考えれば体力的にみて長続きできる仕事ではないし、当人達もそれは自覚していて、インタビューした4人のうち、3人はすでに仕事を変えていたりする。
しかし重要なのは、彼らに共通してある種の「やりがい」を見出しているところと、そこから生まれるメッセンジャー同士の「連帯」があるところ。
ほとんど非正規雇用の状態である彼らは、しかし仕事に誇りを持ち、相互扶助のネットワークを形成する。そのネットワークは仕事をやめたとて断絶することなく、それがツテとなり後の仕事に繋がることが多々ある(もともとメッセンジャーになる人はその前に様々な仕事を経験しており、メッセンジャー集団にはある種のツテのネットワークは強力であると僕は思った)。
重要なのは、相互扶助のネットワークがこの業界に張り巡らされているということ。彼らは仕事中も道路でメッセンジャーを見ると、他の会社の人間であっても挨拶をする。仕事終わりに会社の垣根を越えて飲み会をする。
結局そういったコミュニケーションの結果が、「仕事」を「居場所」に変換するのだろうという印象を、やや月並みではあるが持った。メッセンジャーはずっと続けられる仕事ではない(体力の問題)。その意味で有限だと思う。しかし、有限であるからこその濃密性もあるのかもしれない。そしてその濃密な空間で形成された共同性は、仕事を変えても、場所が変わっても存続し得るものなのかもしれない。そうした物理的有限性と、限りない精神的永続性を持った空間としてのメッセンジャーの空間の記述は非常に面白かった。仕事で自己実現といったものはノンエリートにはできない(エリートにだってごく一部の者しかできないだろう)からこそ、こういった記述が希望だったりするのかな。退屈で終わりのない世界が、終わりを介入させることで濃密性を創り出すというのは、『ゼロ年代の想像力』で宇野さんが郊外を扱ったときにも書いていたので、ちょっとは関係あるかな。
ノンエリート青年の社会空間―働くこと、生きること、「大人になる」ということ
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